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第255話 

「私のせいだ…私こそが余計な存在なんだ。もし私が藤沢家に嫁がなければ、こんなことは起きなかったのに…私こそが余計な存在なんだ!」

伊藤光莉はその場を駆け出した。

「光莉!」藤沢曜は追いかけようとしたが、足を止め、怒りに満ちた目で藤沢修を指さした。「これがお前のしたことだぞ!母さんはお前を心配してわざわざここまで来たんだ。それなのに、お前は彼女が自分を気にかけてないなんて言った!もし本当に無関心なら、遠いところからわざわざ来るはずがないだろう!確かに俺にも過ちはあるが、だからこそお前には同じ道を歩んでほしくなかった。でも今のお前は俺と同じ道を辿っている。幸いにも若子には子供がいない。さもなければ、お前のように呪われた存在になってしまうだろう!」

藤沢曜の目には、怒りだけでなく、悲哀と無力感も漂っていた。彼はそう言い残し、再び伊藤光莉を追いかけた。

「光莉、待ってくれ!待って!」藤沢曜は追いつくと、彼女の手を掴み引き戻した。「逃げるな!」

「放して!」と、伊藤光莉は必死に手を振り払おうとしたが、藤沢曜は予測していたかのようにしっかりと彼女の腕を掴んで離さなかった。

彼女は必死に抵抗したが、藤沢曜は一気に彼女を引き寄せ、強く抱きしめた。「俺は放さない!」

「この馬鹿!放しなさい、放して!」

藤沢曜は彼女を抱きしめ続け、「俺を殴るなり叱るなり好きにしろ。でも、今の状態で一人で運転させるわけにはいかない。俺が送る」

「あなたになんか送ってもらいたくないわ!偽善者!」

伊藤光莉は顔を上げ、怒りに満ちた目で彼を睨みつけた。「こんなことで許してもらえると思うな!」

「許してもらおうなんて思ってない。でも、今日はどうしても俺が送る」

彼女が激しい感情の中で一人で運転させるわけにはいかないと、彼は固く決意していた。

普段は伊藤光莉に対して従順で、

卑屈とも言える態度をとる彼だが、今回ばかりは彼の態度は揺るがなかった。彼女の抵抗をものともせず、彼は彼女を抱き上げ、車の方へと歩き出した。

伊藤光莉は彼の腕の中で何度か叩いたが、やがて力尽き、静かに彼の胸に身を委ねた。

リビングでは、藤沢修と松本若子がまだ立ち尽くしていた。

松本若子は藤沢修の高い背中をじっと見つめ、しばらく無言で彼の後ろに立っていた。

突然、その高い背中が崩れ落ちるように前に倒れ、ドサリと
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